コロナ禍の影響がいまだ心配な2021年。不動産市況と住宅市場はどのように動くのか 市況推移を示す指標は乱高下し、先が見通せない状況
いまだに終息の見えないコロナ禍によって、日本経済のみならず世界的な景気の先行きに強い不安が残るなかで終わった2020年。
Go Toキャンペーンを含め様々な経済対策が政府・与党によって打ち出されてはいるが、幅広い経済分野で不透明感が強く、その影響は当然ながら不動産市場にも及んでいる。
昨年11月16日に内閣府から速報値が公表された2020年7-9月の実質GDPは、前期4-6月と比較して+5.0%(年率+21.4%)と持ち直したものの、その前期にあたる4-6月は-7.9%(年率-28.1%)と3四半期連続でのマイナス成長の反動としては僅かであり、同日経済産業省が公表した9月期の鉱工業生産指数も前月比+3.9%の91.5ポイント、7-9月も+8.8%の89.0ポイントと緊急事態宣言が発出された4‐6月の急落からは脱してはいるが、数値の伸びは依然緩やかだ。
不動産業界に目を転じると、10月の首都圏新築マンション発売戸数(不動産経済研究所調べ)は前年同月比+67.3%の3,358戸で2か月連続の増加を記録しており、契約戸数も2,363戸で初月契約率は70.4%と好不調の目安とされる70%台に達している。ただし10月までの累計発売戸数は17,000戸を僅かに上回る程度に留まっており、2001年以降最も新規発売戸数が少なかった2019年の31,238戸を大幅に下回る2万戸超に留まることは確実だ。
一方、東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2020年10月の首都圏の中古マンション成約件数は3,636件(前年同月比+31.2%)に達し急激な回復を示している。こちらの指標も2020年春からは前年割れが続いていたため、4-6月累計では前年同期比-33.6%の大幅減を記録している。
また、これまで安定した上昇基調にあった地価も転換期を迎えている。国土交通省の「地価LOOKレポート(2020年第3四半期)」によると、住宅系(32地区)では上昇0地区、横ばいが最も多く 26 地区、下落が6地区となった。上昇しているエリアが皆無となって下落している地区が出てきていることがこれまでの状況とは大きく異なっている。
このように各指標がコロナの影響で乱高下しており、経済活動を見切り発車的に再開させたことによって指標が好転している状況もありながら、感染拡大の第三波に至って再び自粛要請が相次ぎ公表されていることもあって、今後の市況推移は全く予断を許さない。状況はまさにコロナ次第と言えるのだが、この間テレワークの進捗で働き方、暮らし方について人々の意識が大きく変わり、住宅選択にも大きな影響を与えているという側面も見逃すことができない。